母乳は乳児に最適な栄養源ですが、完全ではありません。母乳中のビタミンD濃度は0.3μg/100gと少なく(1日1500ml以上必要)、ビタミンDが強化されている人工乳とは違い、母乳栄養児はビタミンDが不足しやすくなります。
ビタミンDは、体内のカルシウムの維持に必要な脂溶性ビタミンで、食物(魚、卵、キノコなど)から摂取するか、紫外線(UV)を直接皮膚に浴びることで作られます。ビタミンDを合成するには、窓ガラス越しではなく、直射日光を浴びる必要があります。
この分を日光浴だけで合成するためには、本州中~西部では1日に夏場で3時間、冬場には20時間以上の直射日光に当たる必要があります。
ビタミンDが欠乏すると、ビタミンD欠乏性低カルシウム血症やビタミンD欠乏性くる病を起こします。くる病はO脚、X脚などの下肢変形や脊柱の弯曲、頭蓋癆(頭蓋骨が薄く、指で押すと凹む)、低身長などを臨床症状とする疾患です。近年日本でも乳幼児のビタミンD欠乏・不足の頻度が高くなり、稀な疾患ではなくなってきました。またビタミンDの欠乏は、アレルギー性疾患の発症リスクとする報告もあります。
最近は紫外線による害を心配し、紫外線曝露を過度に避けたり(日焼け止めを露出面全体に塗る、帽子や衣服で全身の肌を覆うなど)、アレルギーの心配などでの不適切な食物制限などが原因になっています。また近年は周囲にUVカットの商品が多くなり、お母さんも「美白」のため紫外線を避けることが一般的になり、母乳中のビタミンDも減っています。
このため、アメリカ小児科学会のガイドラインは、出生時からサプリメントとしてビタミンDを毎日400IU/日(10μg)以上補充することを推奨しています。当院でも、上記の理由で、半分以上を母乳で育っている乳児に、ビタミンDの補充をお勧めすることにしました。
製剤や使用方法については、乳幼児健診→1か月健診のページをご覧ください。